今回おすすめするワインはこちら。
川上善兵衛が交雑育種で生み出した日本固有の葡萄品種「マスカット・ベーリーA」から造られるハイレベルな一本。
「マスカット・ベーリーA」から造られるワインなんてワインとは呼べない、と思っている方にもぜひ味わっていただきたい一本です。
「マスカット・ベーリーA」から造られるワインは、甘みを伴うキャンディ香が特徴的で、その香りや飲みやすさの影響からか、他の本格的なワインよりも低評価されてきた傾向があります。
私自身もそうでしたが、他の方とは違い身体意識の観点からも観ているため、その観点においてもハイレベルで感動的なワインが殆ど存在しない、という理由がありました。
そのような状況にある「マスカット・ベーリーA」ですが、今回ご紹介させていただく造り手「ドメーヌ デ テンゲイジ/Domaine des Tengeijis」の手掛けるこのワインは、「マスカット・ベーリーA」に対するマイナスな固定観念を覆してくれる素晴らしいワインです。
チーフワインメーカーである天花寺さんは醸造経験を積むために、ニュージーランドでヴィンテージワークに参加。仕込み作業の後には、海外から集まった多くの造り手とのワイン談義になるそうなのですが、その際に、自身の尊敬する造り手のマスカット・ベーリーAを持参するも、前述したキャンディのような甘い香りが海外の造り手には受け入れられなかったという苦い経験をされたそうです。この時の「世界のワインと肩を並べられるように絶対に美味しいワインを造ってやる!」という想いがワイン造りの原動力となっています。
そのような熱いエピソードを持つ造り手「ドメーヌ デ テンゲイジ/Domaine des Tengeijis」のワイン造りに対する哲学は、
「未来につなぐ ”ほんまもん”のワイン」。
この ”ほんまもん”のワインとは、
”上質”であること。
”環境に優しい”こと。
そして、それが”ずっと”であること。
造り手の人柄、そしてワイン造りに対する真摯さが伝わってきますよね。
さて、今回ご紹介させていただく「キュヴェ・テンゲイジ マスカットベーリーA /Cuvée Tengeijis Muscat Bailey A」ですが、上ノ山地区のベテラン契約農家の平均樹齢 20年マスカット・ベーリーA種を使用。全房比率30%、無補糖・無補酸にて発酵。発酵・熟成は樹脂タンクを使用し、樽は使用していません。
品格の伴う赤系果実や柔らかなバニラのような香り、ハーブのニュアンス。味わいは、マスカット・ベーリーAのニュアンスがありつつも単調な印象はなく、品格を伴う果実味と酸、滑らかなタンニンが感じられます。落ち着きと柔らかさ、ストラクチャもあり、葡萄の持つポテンシャルの高さを感じさせてくれます。マスカット・ベーリーAから造られる一般的なワインが持つような俗っぽさやまとわりつくような甘味はなく、ブルゴーニュの良質なピノ・ノワールに感じれるような深みもあります。その点、マスカット・ベーリーAから造られるワインとしては現時点で世界最高峰と言えるでしょう。料理とも合わせやすいバランスの良さと懐の深さも持っています。ぜひ味わっていただきたい一本です。
■身体意識の解説
特徴的な身体意識は、センター(細径軸・大径軸)、サイド・センター(第1側軸・第3側軸)、二重構造の中丹田、温球、心田・心田流、ガイアのクオリティなど。
天性のクオリティを持つセンターは2層構造になっており、細径軸・大径軸が天地に抜け通っています。また、センターの両サイドには背骨に沿うようにサイド・センター(第1側軸)が通っています。これらのセンター系身体意識により、味わいにこれまでのマスカット・ベーリーAのワインという印象からは想像できないほどの品格を生み出しています。サイド・センターは第1側軸のほかに、体幹部に沿うように通る第3側軸も形成されています。この第3側軸はタンニン由来のしっかりとしたクオリティを待っており、味わいへ骨格を与えていますが、熟成とともに柔らかくなっていくことが予想されます。
頭部には、天性のクオリティを持つ清々しい身体意識が斜め上方から入ってきています。これは造り手の身体意識が反映されたものだと考えられ、味わいへベタつかないスッキリとした印象を与えています。
頭部の両サイド、肩幅よりも広い幅で、天性のクオリティを持つ身体意識が天から降りてきています。はっきりとした強さがあり、テロワールの持つ特徴が身体意識へ反映されたものだと思います。
胸部には、熱性のクオリティを持つ中丹田が二重構造で形成されています。これは造り手の熱い想いが反映されたものでしょう。このワインは農家の方々が育てた葡萄から造られているそうなので、もう少し詳細に調べると、農家の方々と繋がっているような、リバースと呼ばれる身体意識も形成されている可能性があります。
上腹部から腰の高さにかけての両サイドには、温性のクオリティを持つ温球が形成されています。かなりの強さがあり、中丹田と併せて果実味の満足感を創り出しています。これはこのワインの特徴的な身体意識と言えます。この造り手の「テンゲイジ 甲州 フレンチオーク樽熟成 2019/Domaine des Tengeijis Koshu élevé en fût de France 2019」にも形成されていた身体意識ですので、テロワールや品種ではなく、造り手の持つ身体意識が反映されたものかもしれません。
中丹田の上部には肩包面のような形状の、ガイアのクオリティを持つ身体意識が形成されており、味わいへ柔らかさを与えています。その上部には天性のクオリティを持つ身体意識が形成されています。味わいにメリハリを与えており、熟成が進むと左右がつながり、肩包面となる可能性があります。そうなると、さらにはっきりとしたメリハリ、横方向へのスケールの大きさ、味わいの豊かさが生まれてきます。
両脇には心田・心田流が形成されています。天性のクオリティと温性のクオリティを下方から導入しており、味わいへ繊細な気品と温かさを与えています。
両手掌底と両肩の斜め上方には、農作物を育てる能力等に深く関係する、ガイアのクオリティを持つ身体意識が形成されています。この身体意識は、おそらく造り手の持つ身体意識が反映されたもので、日々葡萄と関わる際に、手掌はもちろん、両肩斜め上方の空間で葡萄を育むような取り組みをされていることが予想されます。このような身体意識が形成されている造り手の育てる葡萄は、高いポテンシャルを持ち、それがそのまま作品であるワインのポテンシャルへも影響を与えています。
このように身体意識から観ると、全体として品格が感じられ、バランスのよいワインということが分かります。持っているクオリティも多彩なため、飲み飽きせず、料理とも幅広く合わせることができます。センターは程よい強さのため、中心に他の味わいを受け入れる余白、度量があり、料理を主役とすることができるので、センターの通った王道の料理と素晴らしいマリアージュが可能です。また、左右の身体意識のバランスのよさから落ち着きが生まれています。マスカット・ベーリーAから造られるワインは、余韻を中心とした味わいに内包された時間意識の短いものが多いのですが、このワインは、品種が持つ豊かで長い歴史を感じて欲しい、という造り手の熱い想いが伝わってくる素晴らしい一本です。
生産量が約1,300本、という貴重さですが、ぜひ手に入れて味わっていただきたいワインです。
素晴らしい造り手ですので、この造り手の手掛ける他のワインも味わってみたいと思います。
生産者についての詳細は、生産者WEBサイトより抜粋します。
《■未来につなぐ ”ほんまもん”のワイン。
”上質”であること。
”環境に優しい”こと。
そして、それが”ずっと”であること。
ワインの好みは人によって違うため、 一概に何がいいワインとは言い切れません。
それでも、私たちには目指す”ほんまもん”のワインがあります。
それは第一に”上質”であること。
上質なワインづくりは、上質なブドウを育てることから始まります。
私たちは系統選抜されたブドウの苗(いわばブドウのサラブレッド)を2ヘクタールの自社圃場に植え、 品質が確保されたブドウのみでワインを作れる体制を目指しています。
ブドウを発酵させる酵母やワインを熟成させる樽にも上質なものを使用。
こんなに美味しいワインは飲んだことがない。そう言っていただけるワインをお届けします。
そして”環境に優しい”こと。
例えば、ワインをつくる過程で出てしまう「ブドウ粕」。
私たちはこのブドウ粕を利用して「粕取りブランデー」をつくり、 さらに最終的に出たものは家畜肥料や堆肥に変え、畑に還元しています。
美味しいワインを作れるのは、私たち人の力だけではありません。
太陽、水、土、さらには、圃場に訪れる小さな生き物たちも、私たちのワインづくりを支えてくれる存在です。
そんな自然環境に負荷を与えず、いつまでも大切にしたいと考えています。
ずっと上質で、ずっと環境に優しい。
これがドメーヌ・デ・テンゲイジの考える”ほんまもん”のワインなのです。
■ 自然の味わいを引き出すワインづくり
自然は、美味しい。
私たちは、ブドウ本来の味わいを損なわないために、ワインをつくる工程で余計なものを加えず、機械に頼らない伝統的な手法でワインをつくっています。
それは、ブドウそのものの味が一番美味しいということを知っているから。
良いワインは、ワインを飲んでいることを忘れてしまうくらいブドウ本来の味が生きています。
山梨の大自然で力強く育ったブドウの味をぜひ味わってみてください。
これが本当のワインなのかときっと感動していただける思います。
■社会課題への取り組み
耕作放棄地から世界に通用するワインをつくる。
私たちが現在管理している明野小笠原圃場は、もともと手入れされていない「耕作放棄地」でした。
韮崎上ノ山圃場も、農家さんが高齢化により管理しきれなくなった畑を引き継いだものです。
ブドウ栽培に適した場所でありながら、活用されていない「埋もれた地域資源」が数多くあるのです。
本当に勿体無いと思いませんか!?
こういった埋もれた地域資源をブドウ畑に変え、世界に通用するワインをつくること。
そして、ブドウ栽培やワインづくりに携わる人々を増やすことで、雇用の創出に繋げること。
他にも取り組むべき様々な社会課題がたくさんあります。
簡単なことではありませんが、農業やワインを通じて、社会のお役に立ちたいと考えています。
■人と社会に優しい、サステイナブル農法
ブドウを、診る。
昨今、肥料や農薬を全く使わないオーガニックワインがブームとなっていますが、 湿気の多い日本ではブドウが病気になりやすく、上質なブドウが育ちません。
せっかく育てた我が子のような大切なブドウをみすみす病気にしてしまうのは心が痛みます。
大切に育てたブドウは全てワインにして、皆様にお届けしたい。
そこで私たちがたどり着いたのが、「サステイナブル農法」でした。
サステイナブル農法は伝統的な有機農法ですが、オーガニック農法ほど制約的ではなく、 自然が持つ力を最大限に活かしながらも必要最小限の農薬や肥料を使用するというもの。
生態学的に健全で、経済的に成り立ち、社会に対し正しく人道的な農法です。
しかし、いくら科学的進歩の力を借りたとしても、 最後に必要なのは「ブドウを診る観察眼」だと考えています。
ブドウは人間のように声を出してくれません。日々ブドウと真摯に向き合い、 その声なき声に耳を傾けることで、大切なブドウの健康を維持することができます。
必要な時に必要な処置をしてあげること。
確かな観察眼があってこそのサステイナブル農法なのです。》
※《》内は生産者WEBサイトより
https://tengeijis.com
名称 | ドメーヌ デ テンゲイジ キュヴェ・テンゲイジ マスカットベーリーA |
英字表記 | Domaine des Tengeijis Cuvée Tengeijis Muscat Bailey A |
生産者 | ドメーヌ デ テンゲイジ/Domaine des Tengeijis |
国・産地 | 日本・山梨県・韮崎市上ノ山地区 |
セパージュ【葡萄の品種】 | マスカット・ベーリーA 100% |
ビンテージ【葡萄の収穫年】 | 2019 |
タイプ【泡/白/ロゼ/赤など】 | 赤 |
STポイント※1 | 88 |
クラス※2 | ハイクラス |
抜栓 | 2021/11 |