ワインの王道とは何か

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ワインをさらに楽しむために、『ワインの王道とは何か』について取り上げたいと思います。

ワインは造り手や産地、葡萄品種、ヴィンテージなどの要素の違いや水準の高低により、非常に多種多様なものが作られています。そのため、これまでの概念では「王道」「正統派」と呼ぶための定義付けを行うことは難しいのですが、身体意識の観点から考えると、ある種の方向性を見出すことができます。

ハイレベルなワインにおいて、「造り手」「産地」「葡萄品種」「生産年(ヴィンテージ)」が異なっていたとしても、それらに共通する身体意識は何か。

結論から言うと、「センター(軸)」と「丹田」です。

■芯の通った味わいを生み出す身体意識「センター」

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BA_トップセンター(三層構造)名称入り
BA_トップセンター(三層構造)

10000種類以上のワインの傾向から分かったこと、その最たるものが「センター」と呼ばれる身体意識です。古来より軸、正中線などと呼ばれているものの総称であり、ワインのテイスティング表現では、「芯の通った」「まとまりのある」「スケールの大きな」「すっきりとした」「高貴な」「しなやかな」などと表現されるような印象を味わいへ与えている身体意識です。

センターは、体幹の厚みの前から見て5:3の位置、背骨の直前の位置を通るものが最も基本となるのですが、ワインについてもここを通るものが王道と言えます。

また、センターには大きく分けて3種類の太さがあり、それらが全て通っていることがワインにとっても王道となります。最も細いセンターは「細径軸」、ピンポン玉くらいの幅のセンターを「中径軸」、股関節の幅からそれ以上に太いセンターを「大径軸」と呼びます。それぞれ固有の機能を持っており、そのひとつとして、中径軸は細径軸を守る働き、大径軸は中径軸を守る働きがあるのですが、ワインについてはこの機能が、熱劣化などの外部からの悪影響から守る役割を担っていることも分かってきています。

この3種類のセンターを合わせて三層軸と呼ぶのですが、これらが揃っているワインの味わいは、王道と呼ぶのに相応しいものとなります。代表的にこの三層軸が備わっているワインは、ハイレベルなボルドーワインとブルゴーニュワインでしょうか。ボルドーワインについては、葡萄を複数ブレンドして造られることがこの三層軸の形成にプラスに働いており、ブルゴーニュワインについては、異なる性質を持つ土壌が層状に重なっていることが三層軸の形成を促していると考えられます。もっとも、ボルドーの中にも単品種に近い比率で偉大なワイン、例えば「シャトー・ペトリュス/CHATEAU PETRUS」には素晴らしい三層軸が形成されていますが、それはブルゴーニュワイン同様、土壌の影響を色濃く受けた結果であると推測されます。

■三丹田
センター以外で王道なワインに必要な身体意識は、上丹田、中丹田、下丹田と呼ばれる身体意識です。合わせて三丹田とも呼ばれるこれらの身体意識は、それぞれ特徴的な機能を持っています。

■知的で気品ある味わいを生み出す身体意識「上丹田」

BA_上丹田
BA_上丹田

頭部に形成される上丹田は、聡明さ、優れた集中力、認識・思考・判断力、洞察力をもたらし、更には意志力、行動力の支えにもなる身体意識です。ワインのテイスティング表現では、「爽やかな」「気品のある」「知的な」などと表現されるような印象を味わいへ与えています。この上丹田は、ブルゴーニュにおいてもボルドーにおいても、ハイレベルなワインには形成される傾向があります。ワイン造りは大変知的な作業ですので、造り手自身に上丹田が形成されている例が多く、その身体意識がワインへ反映されていると考えられます。

■ 果実味あふれる情熱的な味わいを生み出す身体意識「中丹田」

BA_中丹田
BA_中丹田

胸部に形成される中丹田は、闘志、情熱、やる気、人を愛する気持ち、積極性、勇気、自負心などの源となり、人を熱くさせる魅力、指導力を生み出す身体意識です。ワインのテイスティング表現では、「温かな」「胸を温める」「豊かな」「情熱的な」「生き生きとした」などと表現されるような印象を味わいへ与えています。また、果実味とも密接に関係しており、味わった時の満足感を生み出しています。どの地域のワインにも観られる身体意識ですが、造り手のあふれるような情熱、ファンからの熱い期待、太陽や土の温かさといった環境的因子など、ワインによってその形成にはさまざまな要素による影響があります。

■ 重みのある落ち着いた味わいを生み出す身体意識「下丹田」

BA_下丹田
BA_下丹田

腹部に形成される下丹田は、確固不抜の不動心、胆力、冷静沈着さをもたらし、安定し、どっしりと重みのある姿勢と動作の源となる身体意識です。古来より「肚(ハラ)」と称され重要視されてきました。ワインのテイスティング表現では、「重い」「しっかりとした」「腰の強い」「落ち着きのある」などと表現されるような印象を味わいへ与えています。ボルドーワインに多く観られる身体意識であり、長い年月をかけて歴史的に形成されてきたシャトーという印象が与える格や存在感が、ワインの身体意識へ反映されているのでしょう。ブルゴーニュワインでは、造り手や土壌からの影響によって形成される例もありますが、あまり下丹田が強いとハイレベルなブルゴーニュワインの天上の世界のような印象とは異なるため、ボルドーほど強さはないことが多いようです。

3D_model_BA_身体意識
3D_model_BA_身体意識

三層構造のセンターと三丹田が揃っている、もしくはそれに近い状態で、高いレベルで身体意識の調和が取れているワインは、テイスティング表現で「フィネス」と表現されるような偉大なワインとなっていきます。

もちろん例外もありますが、特にセンターという身体意識については、歴史に残る偉大なワインには全て形成されている、と言っても良いでしょう。

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旨安ワインと呼ばれるような、安くて美味しいと言われているワインの多くは、表面的な味わいは美味しくても、身体意識がほとんど感じられません。しかし旨安ワインの中でも、センターや三丹田が形成されているようなワインに出会うと、今後どこまで評価されていくのか、という楽しい気持ちになってきます。評価されて価格が高騰してしまうのは残念ですが笑

そのような今後を予測する楽しみ方の基準にもなる、身体意識から観る王道なワイン・正統派なワインについて、今後も研究を重ね面白い成果を発表していきたいと思います。

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