テイスティング表現と身体意識

ワインの特徴や味わいを表す言葉、テイスティング表現と身体意識の関係はどうなっているのでしょうか?

■ボディ
フルボディ/ミディアムボディ/ライトボディという表現が使われますが、その違いは身体意識で考えると何なのでしょうか?

例えばフルボディの特徴は、濃厚さとコク、凝縮感、しっかりとした構造、ボリューム感、アルコール感、余韻の長さ、樽による熟成感、重厚感などと表現されます。ボディと呼ばれるくらいですから、身体に例えた表現ですので、そのような身体的特徴を生む身体意識を持ちます。

簡潔に言えば、フルボディのワインとは、飲んだ時に身体、つまりボディが優れた身体意識で満たされるワインのことです。そのため、赤ワインはもちろんのこと、白ワインにもフルボディのワインは存在します。

フルボディのワインは、全体的に身体意識のストラクチャが強く、特にセンターは高く深く強く、三丹田(上丹田/中丹田/下丹田)は大きく強い傾向があります。また、身体意識を構成する要素の数も多いです。

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■重い/軽い
基本的にワインの重さ軽さは、ボディと対応していますが、稀にフルボディでも軽やかさを感じさせるもの、ミディアムボディでも重さを感じさせるものがあります。前者の場合は、浮身を作り軽く感じさせる身体意識、例えば吊りセンターや肩包面、心田流、舟などがあると考えられ、後者は、下丹田、地重根、アーダーなどが発達していると考えられます。
物理的にはほとんど同じ重さにも関わらずこのような重い軽いという表現があるのは興味深いです。身体意識で言うところの「重」「軽」というクオリティです。そういう意味で、テイスティング表現の中でもより身体意識を捉えた表現とも言えるでしょう。

■肉付きのよい/引き締まった/骨格のある
(肉付きと骨格)
これらもボディを表す際に用いられる表現です。ボリューム感がある場合は、肉付きのよい/グラマーな/ふくよかな、といった表現が使われ、引き締まった感じの場合は、スマートな/スリムな/シャープな、といった表現が使われます。

どちらも共存する場合もあり、その場合はボリューム感がありつつ引き締まっているので、ガッチリとした/ボリュームのある筋肉質/などと表現されます。また、共存していて、尚且つそれらのバランスが良く気品が感じられる場合は、しなやかな、と表現されます。

さらに、しっかりとした構造が感じられる場合は、骨格のある/骨格のしっかりした、という表現を使います。主に白ワインの骨格は酸味から、赤ワインの骨格は酸味とタンニンからくる渋味から作られます。

長くなりましたが、それでは身体意識的にはどのような傾向があるのでしょうか?
ボリューム感のあるワインは、全体として身体意識のボリューム、規模があります。中でも、中丹田や下丹田など、球状の身体意識が大きく発達している傾向があります。また、心田流やパームが発達しているものも多いです。
引き締まった感じのワインは、センターの中でも束ねまとめ上げるような機能を持つものや、側軸、上丹軸(上丹田に入ってくる軸)などの身体意識を持っています。
ガッチリとしたワインは上記2つの特徴の身体意識を併せ持ち、さらに気品が感じられるしなやかなワインはそれらに加え、満天の星空のような清々しく高雅なクオリティを持つ高く深いセンター、上丹田、肩包面、スライサー、ウォールなどが発達しています。各丹田の形状も美しくきめ細やかです。
骨格のあるワインは、身体の格となるような身体意識、つまり身体座標空間とそれに伴う身体意識であるセンター、レーザー、肩子、転子、仙などが発達しています。
これらが全て発達し、高いレベルで調和が取れている場合に、偉大な/フィネスという表現が使われます。この場合、3層構造のセンターが形成されており、中でも大径軸が発達しています。

■柔らかい/硬い
これらも重い軽い同様、物理的な性質が硬かったり柔らかかったりするわけではありません。そのため、身体意識のクオリティと近い意味合いと言えます。
身体意識では、硬いクオリティ、柔らかいクオリティとして表せます。
硬さは前述した肉付きや骨格とも関係します。身体意識においては、骨格自体が硬い、柔らかいという場合もありますが、この場合の硬さは筋肉骨格ともに固まっている状態です。硬さがひどい場合は、自由度のない拘束的な身体意識を形成しています。そうなっていると、香りも味も乏しく、美味しいワインとは言い難い状態です。
柔らかさは、骨格がある前提で筋肉が柔らかい状態です。骨格がなく他が何となく柔らかい場合は、ぼんやりとしてダレた印象になってしまいます。当然センターも通りません。
また柔らかい場合は、身体意識も柔らかいクオリティで自由度が高く、料理ともマリアージュしやすい傾向があります。

■開いている/閉じている
柔らかい硬いと関連性のある表現です。ほぼ同じ意味として使われることが多いですが、
身体意識の観点から言うと、硬いからといって、必ずしも閉じているワインと言えない場合があります。また、同様に柔らかいが閉じているワインもあります。では、そういった場合の開いている、閉じているとはどういった身体意識の状態なのでしょうか?
これは飲んだ時に感じられる、あの感覚を思い出して頂けるとわかりやすいと思います。

内向的/外向的と言い換えた方が分かりやすいでしょうか。身体意識の方向性が内側へ向かって閉じる方向のものが多い場合と、外側へ向かって開く方向のものが多い場合との違いです。

身体意識の中でも、特に中丹田の状態と中丹田へのリバースの有無が、ワインを飲んだ時に感じられる、開いている/閉じている、という感覚を決定している傾向があります。硬いワインをゆるめ解したり、閉じているワインを時間をかけて開かせていく方法を色々試してみるのもワインの楽しみの1つですよね。

■余韻
余韻とは、ワインを飲んだ後に感じられる香りや味わいの持続性です。秒数で表現され、コーダリーとも呼ばれます(1コーダリーが1秒)。長いものだと9秒以上になると言われています。
余韻の長さはよいワインの特徴のひとつですが、どのような身体意識から生まれるものなのでしょうか?
まず、センターで言えば、より深さ高さがあります。

また、三丹田へ染み入るようなクオリティがあります。下丹田は大地と繋がり、そこへ染み込んでいくような構造を持つワインもあります。
他には、身体意識の中の「時間意識」が発達しているワインもあります。時間意識は、子供の頃、周りの時間の経過がゆっくりと感じられたのに、大人になるにつれてアッという間に時間が過ぎ去るという経験をされた方が多いと思いますが、その例のように、実際の時間ではなく、体感の時間、身体意識としての時間のことです。この時間意識は図示できるような構造は持ちませんが、重要な身体意識です。この時間意識が発達しているワインを飲むと、物理的には数秒〜数十秒という間に、長い歴史、幾星霜、悠久の時、というような、得も言われぬ時の流れが感じられます。
そのようなワインの背景には、長期熟成はもちろん、受け継がれてきた造り手の歴史、葡萄の歴史、土地の歴史などがあり、それらが相乗的に作用することで、時間意識の発達した偉大なワインができるのだと思います。
このようなワインを飲む時には、ワインに敬意を払い、我々自身が時間意識を十分に感じられるような身体意識を体現しておきたいものです。

■キレのある
主に辛口の泡や白ワインに対して使われる表現です。キレを作る身体意識は、白ワインの場合、青で書き表わせるような天性のクオリティを持つセンターと、それに沿うように天から降り注ぐ様に降りてくるシャワー状の身体意識です。特にセンターは細径軸が強く、センターそのものにも天から地の方向へモビリティが掛かっています。

また、シャンパーニュなどの泡の場合、それらに加え、下から上へ上昇してくるモビリティを持つ清々しいシャワーのような身体意識もあり、地方向へキレがありつつ天へ向かってパッと晴れるような、逆方向のモビリティが重なりあう構造でキレを作り出しています。
赤ワインの場合、このようなキレのあるものもありますが、別のキレ方もあります。下から何層もの複雑な味わいが重なり合って、それらがスルスル、ススーとズレ合うような状態で揺らぎながらも、層同士が決してごちゃ混ぜにならずにハッキリとしている、このような層同士をスパッと切り分けている身体意識は、スライサーや肩包面と呼ばれる身体意識です。ただし、このようなワインは、気品がある、エレガント、と表現されることが多いです。
一口にキレのある、と言っても様々な身体意識が働いているのですね。

■ハーブ/森の下草/腐葉土の香り
ハーブは、ミントやヴェルヴェーヌのように緑や青っぽい草の香りのものを想像されると分かりやすいかと思います。ソーヴィニヨンブランに代表されるようなあの香りです。森の下草はその表現の通り、湿った森の下草の香りで、そこへ生えている草や積もった落ち葉、土の香りが混じり合ったような香りです。腐葉土は、森の下草の香りを発するワインの熟成が進んだ時の香りです。身体意識では、いずれも緑色で描けるようなガイアのクオリティを持っています。また、直接的に森や土のクオリティと繋がっている場合もあります。

■ヨードの香り
海藻や磯の香り、海の水分の香りです。身体意識的には強いガイアのクオリティを持っており、そこへ、熱性や天性のクオリティも混ざります。また、直接的に海水のクオリティと繋がっている場合もあります。

■トースト/バター/ハチミツ/ヴァニラの香り
いずれも主に樽由来の香りです。身体意識で共通するのは、温球や中丹田です。そこへ、ハチミツならガイアのクオリティ、ヴァニラならガイアと天性のクオリティが合わさる、といった具合に少しづつ特徴が異なります。

■針葉樹の香り
主に若い重めの赤ワインに感じられる香りです。身体意識としては、天性のクオリティを持つセンターや上丹田、ガイアのクオリティを形成します。

■果実
その名の通り、果実の香りや味わいのことです。柑橘系(レモン、ライム、グレープフルーツ)、白系(青リンゴ、メロン、洋梨)、赤系(イチゴ、ラズベリー、すぐり)、黒系(ブルーベリー、カシス、ブラックベリー)、黄系(ミラベル、アプリコット、桃)、南国系(パイナップル、パッションフルーツ、マンゴー)、ドライフルーツ/ナッツ系(乾燥イチジク、レーズン、プルーン、ローストアーモンド、カシューナッツ)など多様な果実があります。それぞれで身体意識の傾向は異なりますが、大きく分けると、酸味の豊かな果実にはセンターや上丹田、甘みの豊かな果実には中丹田や温球、枯れた感じの果実には下丹田や下軸があります。
そう言えば、葡萄から作っているのに葡萄があまり例えにないのは面白いですね。それだけ葡萄が味わい豊かな果実だとも言えますね。

■アタック
これは味わいに対する表現です。ワインを口に含んだ瞬間の印象なので、主に果実味/甘み/酸味の強弱で表現されます。渋みやアルコール感などは、口に含んで少し経ってから感じられます。身体意識としては、硬かったりストラクチャが整い切っていない場合、アタックを強く感じます。その上で、果実味や甘みを感じる場合は熱性のクオリティ、酸味を感じる場合は冷性のクオリティを持っています。

■流れるような
これはボディに関係のある表現です。肉付きのよい、は果実味とタンニンが強く酸味が弱い場合、骨格のある、はタンニンと酸味が強く、果実味が弱い場合なのに対し、流れるような、は果実味と酸味が強く、タンニンが弱い場合に使われる表現です。引っかかりかなく、サーと流れていくよう感じです。

身体意識としては、何らかのモビリティを持つことが特徴です。特に天から地の方向、後ろから前の方向にモビリティを持つ場合、この表現が使われます。

この時のストラクチャとしては、前者は主にセンター系の身体意識、後者は流舟と呼ばれる身体意識です。センター系の場合は、サーと疲労感を上から流して頭をスッキリさせてくれる効果があります。流舟について、後ろから前へ向かって上昇するような流れは、熱性のクオリティであることが多く、この流れが背中から中丹田へ入ってくる場合、背中を押されてドンドン前へ進んでいけるような精神的状態になります。そういうワイン、ありすよね。ついついドンドン飲んでしまいます。

また、この流れが剛性・重性のクオリティを持ち、仙骨から下丹田に入ってくる場合はしっかりとした落ち着きがありつつ、確固たる意志で前へ進んでいくような感じがします。タイプは違いますが、どちらも素晴らしいワインですね。

■チョコレート
柔らかく滑らかなタンニンが作り出す味わいです。身体意識としては、柔らかさがある骨格のようなもの、例えば、転子から下の側軸、裏転子などが形成されます。

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