ワインのポテンシャルを最大限引き出すために

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ワインをさらに楽しむために、『ワインのポテンシャルを最大限引き出す』ことについて取り上げたいと思います。

ワインを味わう人間にとって、最も重要なことの1つは、そのワインを出来る限り美味しい状態で味わうこと、でしょう。

では、ワインがすぐ手元にある状況で、これから飲むという場合、美味しい状態にするために出来ることは何でしょうか?

温度管理やデキャンティング、ワイングラスの選択、抜栓日の選択、合わせる料理の選択など、その場で出来ることが限定されればされる程、本人やワインをサービスする人間の身体意識のレベルによる影響がワインの味わいへ顕著に現れます。

記号的には信じ難いことですが、全く同じワインで同じグラス、同じ温度でも、味わいは全く異なることがあります。ワインは個体差のある飲み物ではありますが、その差が個体差以上であることはよく直面することです。その味わいの差の最も本質的な要因がサーブする人や注ぐ人の身体意識の差、中でも地芯の深さ、そして地芯から立ち上がるセンターのレベルの差なのです。

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個体差が少なく、味わいの安定している日本のビールですら、注ぐ人によって味わいは全く異なります。

例えば同じ銘柄のビールを高岡師範と私で注ぎ、飲み比べた場合、本当に同じ銘柄なのか、と疑ってしまうほどの味わいと身体意識の違い、レベルの差が生じます。

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高岡英夫師範による『極意注ぎ』

注ぎ方【極意注ぎ】

おそらく、それらをブラインドでテイスティングした場合、殆どの優秀なソムリエは味わいの違いを認めるでしょう。
それなのになぜ、そのような注ぎ手による味わいの違いを競うコンクールがないのでしょうか?

例えば、3年に1度開催され、世界一のソムリエを決定する「A.S.I. 世界最優秀ソムリエコンクール」は、以下のような内容で競われます。

■予選
実技、ブラインド・テイスティング、理論やビジネス知識を問う筆記試験

■決勝
1. サービス課題①
数名のゲストに対し、ワインを含む様々な飲料を、ゲストの要求に応えながらサービスを行う。制限時間は4分間。豊富な知識、サービス能力、対応能力などが試される。氷を入れてほしい、という要求などもあり、予め準備されている限られたものの中での対応能力が求められる。

2.ブラインド・テイスティング課題
ワインの外観、香り、味わい、国、品種、サービス方法、合わせる料理などについてコメントを行う。制限時間は3分間。

3. サービス課題②
指定されたワインをデキャンタージュし、8名へサービスする。制限時間は6分間。サービス中に審査員より、そのワインについての様々な知識や背景について質問され、それらに答えながらサービスを行う。

4.ブラインド・テイスティングとマリアージュ課題
4種のワインのブラインド・テイスティングを行い、それぞれのワインとマリアージュする料理を提案する。制限時間は3分間。

5.マリアージュ課題
コース料理の各メニューに合わせて、生産国の異なるワインを提案する。制限時間は3分間。ゲストから、赤ワインで煮た肉に白ワインを合わせたい、というような要求が入る。

6. ワインの品種分類課題
カードに記載された24種のワインを、品種別に分類する。世界の有名ワインについての知識が求められる。

7. ワイン以外のブラインド・テイスティング課題
10種類の蒸留酒やリキュールなどの飲料を特定する。制限時間3分間。飲料全般に対する幅広い知識が求められる。

8.サービス課題③
スパークリングワインなどのマグナムボトルを16脚のグラスへ均等に注ぐ。制限時間は5分間。

いかがでしょうか?このように見ていくと、同じワインをその場で如何に美味しくして提供できるか、という観点が抜け落ちていることが分かります。

・専門的知識と記号能力
・サービス能力
・プレゼンテーション能力
・対応能力
・テイスティング能力
・マリアージュ能力

ソムリエにとって、これらの能力に加え、

【ワインのポテンシャルを最大限に引き出す/Unleash the full potential of wine】

この能力が必要である、と本サイトでは提案したいと思います。

この、ワインのポテンシャルを最大限に引き出す能力は、ソムリエに必要な能力の中で、最も重要な能力のひとつではないでしょうか。

La Pesa Moderna_1
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いくらブラインド・テイスティングが出来たとしても、レストランに来た客は、「すごいなぁ」くらいにしか思わないですが、もし知っているワインが、自分が覚えている印象よりも圧倒的に美味しく提供されたなら、とても嬉しいはずです。

コンクールにしてもそうで、ブラインド・テイスティングが出来るソムリエを見ても、「すごいなぁ」程度の印象ですが、全く同じ銘柄のワインを1番美味しく注ぐことができるソムリエを見たら、「あのソムリエがいるお店に飲みに行きたい!」となるのではないでしょうか。

ブラインド・テイスティングについても、水のテイスティングを導入したり、同じ銘柄のワインで、抜栓日が1日違うものを出してみたり、まだまだ本質に迫るための工夫はできるはずです。

とにかく、「ワインのポテンシャルを最大限に引き出す/Unleash the full potential of wine」のコンクールをそろそろ実施するべき時期なのかと思います。現状のソムリエコンクールに課目として取り入れることが難しいようなら、単独のコンクールとして開催していただくことで、ソムリエ業界のさらなるレベルアップにつながると確信しています。

Unleash the wine!

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注ぎ方【極意注ぎ】

トルネード乾杯

デキャンティングの判断と方法

【総支配人 ワインバトル 第9回】

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